「サービスの提供者として、事業主として、そして一人のプロフェッショナルとして、常に考慮する必要があるのは、バリアフリーとインクルージョンは、遅かれ早かれ私たちの人生に影響を与えるということです。だからこそ、バリアフリーとインクルージョンは非常に重要であり、社会のあらゆる面において考慮する必要があるのです。」
What to listen for
メイン MC のブランドン エアハルトとゲスト MC のトビー ウィリスがホイール ザ ワールドの共同創設者、アルバロ シルバースタイン氏を迎えて話を伺う、「旅行ビジネスをサポート」シーズン 2 のエピソード 1 をお聴きください。
今回のエピソードでは、旅行業界をバリアフリーの観点から取り上げます。シルバースタイン氏とウィリスが、障がいを持つ旅行者として体験と、インクルーシブな旅行オプションを探した経験から気付いたことを語ります。
旅行における障がいに対する配慮やバリアフリーな旅行体験の重要性、旅行を誰もが楽しめるものにする方法についての対話をお聴きください。
Read the transcript
[00:02:37] ブランドン 旅行業界はバリアフリーという面で改善できる点が多くあります。ですから、トビーさんは今日取り上げるテーマにぴったりの方です。トビーさんは、今日インタビューにお招きするゲストの方と面識があるとお伺いしました。
[00:02:50] トビー はい。アルバロさんのことは、何年も前からよく知っています。現在、私たちは Travel Ability の諮問委員を務めており、去年は私が配信しているポッドキャスト Explorable でもバリアフリー旅行についてアルバロさんにインタビューしました。
[00:03:03] ブランドン ということは、トビーさんと今回のゲストであるホイール ザ ワールドの共同創設者のアルバロ シルバースタイン氏は、今回のテーマにぴったりの組み合わせというわけですね。ホイール ザ ワールドは、バリアフリーの旅行を予約できる障がいのある方とシニア向けのオンライン サイトです。チリ出身の起業家で講演家、熱心な障がい者支援者でもあるシルバースタイン氏は、何百万人もの人が世界を自由に旅行できるように、2018 年にホイール ザ ワールドを設立しました。経営コンサルティングとしてラテンアメリカ中心の企業を指導した経験を持つシルバースタイン氏は、完全にバリアフリーな旅行体験を提供するためにさまざまな企業と緊密に協力し、障がいのある方が、マチュピチュやイースター島、パタゴニアなどのアクセスしにくい目的地を楽しめるように取り組んでいます。また自社での取り組み以外にも、チリ政府の顧問として、障がいのある方のソーシャル インクルージョンのための国家戦略開発にも携わっています。それでは、アルバロさんにお話を伺いましょう。アルバロさん、「旅行ビジネスをサポート」シーズン 2 のエピソード 1 にお越しいただきありがとうございます。アルバロさんの会社、ホイール ザ ワールドについて詳しくお話を聞きたいと思っています。会社紹介と起業のきっかけについて教えていただけますか。
[00:04:10] アルバロ ホイール ザ ワールドは、バリアフリーな世界を作りたいという、はっきりした目的を持ったスタートアップ企業です。私たちは 2018 年の創業以来、障がいのある方がバリアフリーな旅行体験を見つけて予約できるオンラインエコシステム、オンラインサイトを構築してきました。それが WheelTheWorld.com です。サイトでは宿泊施設、ツアー、アクティビティ、周遊旅行、送迎サービスも見つけることができます。WheelTheWorld.com を通じて予約するすべての旅行体験には、詳しいバリアフリー情報とバリアフリー中心の認証済みユーザー体験が提供され、当社からユーザーのニーズに最適なサービスが推奨されます。これが私たちが提示するバリュープロポジションです。私たちはユーザーが確実にバリアフリー対応の施設をオンライン予約できるよう保証し、バリアフリー施設を実現するよう取り組んでいます。2018 年以来、世界 15 か国の 3,000 人以上が私たちのサイトで旅行を予約し、30 か国 200 か所の目的地の旅行の予約に活用されています。私は 18 歳のときから車椅子を使っていますが、常に旅行は重要な意味を持ってきました。旅行と、それから冒険ですね。私は毎年、両親と 3 人の兄でキャンプに行っていましたし、今でもスポーツやアウトドアのレクレーションが大好きです。交通事故に遭い、二度と歩けないとわかったときに私がした最初の質問は、これから、多くの大好きなことをどうやって楽しめばいいだろうか、というものでした。私はハイキングやサーフィンも大好きです。旅行に行けるとわかるまで、そしていろいろな場所を楽しめるとわかるまでには、長い時間がかかりました。7 年ほど前のことですが、親友のカミーロと一緒に、チリのトレス デル パイネへ行く旅行の計画を始めました。カミーロは、ホイール ザ ワールドのもう 1 人の共同創設者です。1 人のチリ人としてそこへ行くことは私の夢でしたが、そこは人里離れた不便な場所にあり、行ったこともないので、ずっと不可能だと思っていました。ですが、とにかくカミーロと一緒に旅行の計画を始めてみて、そしてハイキングができる特殊な車椅子が必要だと気づきました。また、ほかに誰も私たちのように車椅子で旅行した人はいなかったので、泊まる場所や移動手段の問題を解決しなければならないこともわかりました。そこで私たちは、その旅行を 1 つのプロジェクトに変えることにしました。それは車椅子利用者として初めて、パタゴニアのトレス デル パイネ国立公園で W トレックを完走するという試みでした。このミッションを達成できたら、ほかの人も再現できるのではないか。つまり、もし私たちができるのなら、ほかの人にもできるのではないかと考えたのです。それがそのときの私たちのビジョンでした。
[00:07:18] トビー お客様が何と言っているか興味がありますね。アルバロさんは、私たちのような障がいのある人が旅行する機会を大きく広げているように思えます。ホイール ザ ワールドや旅行での体験について、お客様からの声やエピソードのようなものはありますか。
[00:07:33] アルバロ お客様からは大変喜ばしい声をいただいています。多くの感動的な反応が寄せられています。お客様はまず当社について知ったときに感動されます。通常、障がいのある方は、自分たちのニーズに合わせて特別に用意されたサービスを見ることがないからです。これが本当か心配するお客様も多くおられます。当社の行うサービスに対して多くの感謝の声をいただきますし、もちろん実際に素晴らしい体験をされて、さまざまなコメントをいただきます。たとえば、最近私がよく紹介しているコメントがあるのですが、当社を利用してアフリカに旅行されたカップルがおられます。お二人は当社が提供しているバリアフリーのサファリツアーに参加されました。予約した方には障がいはなく、その方の夫が車椅子利用者でした。これまで、お二人はいつも、周りの状況に合わせて妥協していたそうです。ほとんどの障がいのある方がそうだと思うのですが、そのお二人も、自分たちにとって難しい状況に自分たちが合わせることを普通だと考えていました。しかし今回初めて、「状況、サービス、運営の方が私たちのニーズに合わせてくれたと常に感じた」という声をいただきました。こういった声をいただくと、今まで取り組んできたことに価値と意味があったと実感します。私たちがホイール ザ ワールドで 5 年間取り組んできたことのすべては、こういった瞬間のためにあります。
[00:09:15] トビー とても共感できるお話です。そういった機会を提供できることは本当にやりがいを感じますよね。「旅行は人生のおもちゃ箱だ」という言葉を聞くことがありますが、私たちは誰もが Expedia Group で「遊ぶ」権利があります。私たちは皆、旅行が大好きです。旅には人の心をより豊かにする力があり、障がいのある方を含め、私たち全員が旅をする機会を持てるべきだと思います。ですから、すべての人にとってインクルーシブであることが非常に重要です。アルバロさんの取り組みにお礼申し上げます。
[00:09:43] アルバロ いえ、こちらこそありがとうございます。「旅は人の心をより豊かにする」というのは良い言葉ですね。気に入りましたし、同感です。私の場合、旅行というのは、障がいを持ちながら世界にどのように適応していくか知るためのリハビリの一環でもありました。旅をすれば適応しなければなりません。コンフォートゾーンから出る必要があります。人はそうやって学ぶものです。私はこれまでに多くの旅をしました。私は重度の障がいを持っており、胸から下は麻痺しています。腕は一部しか動かず、指はまったく動きません。旅をするたびに、私は自分自身について知りました。自分に何ができるか、どのように助けを求めればよいかといったことを、何度も学びました。ですから、Expedia の「旅は人の心をより豊かにする」という言葉には心から同意します。
[00:10:43] トビー 先日の旅行で、空港への行き来に公共交通機関を使ったのですが、旅を「人の心をより豊かにする」ものと考えるとき、その旅行のことを思い出します。そのときの移動はバスから地下鉄、その後 1 km ぐらい歩くという感じだったのですが、私は目が見えないので、エレベーターを使ったり、スタートからゴールまで付き添ってもらうこともできました。しかし、それを一人でやり遂げる方法を見つけるというのが、私にとっては本当にやりがいがあり効果的でした。多くの人には理解できないでしょうが、自立しているという感覚は大きな充実感をもたらします。それこそがまさに、旅行をバリアフリーにすることを通して私たちがしていることです。私たちは、誰もが自らに合った様式や流儀、方法を選べる自立性、独立性、自由を持てるように取り組んでいます。
[00:11:26] アルバロ 自立していると感じることで充実感を得る体験をスムーズな方法で実現できるというのが、当社がお客様に対してもたらしたいことであると言えます。障がいを持つ人は少数派だと見なされています。世界の人口の 15% にあたるとされていますが、私は障がいのある人が少数派だとは思っていません。私たち全員が遅かれ早かれ障がいを持つことになるからです。一部の人はほかの人よりも早く障がいを持つだけで、このポッドキャストを聞いている人も全員、いずれ年を取ると障がいを持つことになります。サービスの提供者として、事業主として、そして一人のプロフェッショナルとして、常に考慮する必要があるのは、バリアフリーとインクルージョンは、遅かれ早かれ私たちの人生に影響を与えるということです。だからこそ、バリアフリーとインクルージョンは非常に重要であり、社会のあらゆる面において考慮する必要があるのです。
[00:12:27] ブランドン バリアフリーについて考える中で、先ほどの「旅行は人生のおもちゃ箱だ」という表現がとても気に入りました。ここからは「おもちゃ箱」から「道具箱」に視点を変えて考えてみたいと思います。このポッドキャストは非常に多くのホテル関係者に視聴していただいています。そして、多くの方が「ホテルでの宿泊体験がバリアフリーかどうか」を気にされていると思いますが、私たちが調査を進めていく中で分かったのは、この問いの答えがイエスかノーかという単純な問題ではなく、状況によるということでした。特に宿泊施設の掲載内容について考えるとき、宿泊がバリアフリーかどうかを調べているお客様が適切に判断できるようにするには、どうすればいいでしょうか。ホテル関係者にどのようなアドバイスがありますか。
[00:13:15] アルバロ 当社のパートナーや協力先のホテルチェーン、宿泊施設にいつもアドバイスしているのは、第一に、自施設のバリアフリーの程度を徹底的に評価し、良い点、悪い点を調べて改善できる点を把握する必要があるということです。第二に、スタッフのトレーニングです。お客様全般にサービスを提供している人が、バリアフリーに関するさまざまなニーズ、さまざまな障がい、自らの宿泊施設で対応できる点、対応できない点を理解していることが重要です。第三に、バリアフリーに関して対応できる点を把握したら、それを公表することです。これは重要です。障がいのある旅行者はバリアフリーの程度を知る必要があるため、それを適切な分類で公表してもらいたいのです。多くの場合、客室が適切に分類されていないことが大きな問題を招きます。予約プロセスでバリアフリー ルームが見つかったとしても、予約した客室がバリアフリー対応であるとは限らないからです。ですから、お客様がバリアフリーであると確信できる適切な方法で、サイト上に掲示してください。
[00:14:36] ブランドン 92% の消費者は、旅行サービス提供会社がバリアフリーのニーズを満たすことがすべての旅行者にとって重要だと考えています。旅行をもっとバリアフリーなものにしたいという願いがあるわけですね。では、旅行の現状についてお話を伺いましょう。障がいのある方が旅行中に体験する最もよくある問題は、どのようなものでしょうか。
[00:14:55] アルバロ 宿泊施設の問題からお話しましょう。まず、世界のホテルの客室のうち、バリアフリーと定義できるものは 5% もありません。数が限られていること、これが 1 つ目の問題です。2 つ目の問題は、バリアフリーの客室を見つけるのが非常に難しいことです。多くの場合、施設の説明からバリアフリーかどうかを判断できません。バリアフリーと書いてあっても信頼できないことも多くあります。バリアフリーと書いてあるホテルがあったとしても、説明や写真を見るとバリアフリーになっておらず、信頼できなかったりします。また、情報もかなり詳しいものが必要です。たとえば、私のような車椅子利用者にとっては十分バリアフリーなホテルであっても、トビーさんにとってはそうでない場合もあります。一人ひとりバリアフリーのニーズは異なるため、詳しい情報が非常に重要なのです。それから、予約したとおりの客室が取れないという問題があります。よくあるトラブルが、バリアフリーの客室を予約したのに着いたらそこに別の人が泊まっていた、というものです。まず客室の分類の問題、それから収益目的のオーバーブッキングにより予約済みの客室を予約することになり、泊まる客室が変わってしまうという問題が起きてしまいます。まとめると、信頼できる詳しい情報がないという情報面の問題と、予約が保証されていないという問題があります。以上が宿泊施設の問題です。もう一つの問題については、トビーさんの意見も伺いたいと思うのですが、私は身体障がいと移動障がいが専門です。ニュースでいつも取り上げられていて、影響も大きく、解決する必要がある問題が、空の旅に関するものです。航空業界には非常に大きな問題があります。障がい者用設備が破損した、航空機への搭乗時に大きな問題があった、機内のトイレに行けなかったなど、航空業界には至急解決すべき大きな問題があります。
[00:17:24] ブランドン トビーさんは以前、当社の旅行サイトのバリアフリーに関する掲載内容について考えるとき、「規範的」と「説明的」の違いについて話していましたよね。「規範的」と「説明的」の違いと、それが重要な理由について、もう少し詳しく説明していただけますか。
[00:17:43] トビー はい。情報の共有に関するアルバロさんの話に戻るのですが、旅行者が確信を持って情報に基づいた決定を下せるだけの情報を共有するというのは、極めて重要なことです。ですから私の目標は、企業が「規範的」な行動をやめることです。たとえば、「この客室はバリアフリーです」と書くのではなく、「説明的」に、ドアの幅や寝具の高さ、バスルーム内の回転半径など、一定レベルの情報を提供するわけです。そのような詳細な情報があれば、旅行者は自分で判断できます。それがインクルージョンの核心である独立性、自立性、選択性につながり、旅行者が「この情報によれば、ここは私にとってバリアフリーだ」と、自信を持って選択できるようになるのです。
[00:18:29] ブランドン トビーさんに一つ伺いたいことがあります。アルバロさんの意見も伺いたいのですが、旅行サービス提供会社がビジネス上の決定を下すときに、目に見える障がいを持った方、目に見えない障がいを持った方を含め、すべての旅行者について配慮するには、どうすればいいでしょうか。
[00:18:44] トビー そうですね、非常に広い範囲に関わる質問だと思いますが、一つ、すべての問題を解決できる非常に簡単な答えがあります。障がい者を雇えばいいんです。米国では障がいのある方の失業率は 70% 近くに達しています。これは道義に反しており、受け入れることはできません。「私たち抜きに私たちのことを決めないで」というのは、すべての障がい者の思いを表すスローガンとして何年も使われてきました。これが今、「あらゆることを私たち抜きに決めないで」に変わろうとしています。私は、さまざまな障がい、さまざまな人生経験を持つ人を雇うことで商品はさらに良くなると思っています。
[00:19:19] ブランドン アルバロさん、あなたのご意見はいかがでしょうか。旅行サービス提供会社がすべての旅行者について配慮するには、どうすればいいでしょうか。
[00:19:26] アルバロ 第一に、人にはさまざまな実態があり、それについて学ぶべきことが多くあるということを認識して、それに対応し、受け入れるよう努めることだと思います。障がい者を雇うというトビーさんの意見には賛成です。障がいのある人がチームにいれば、障がいのある方に役立つソリューション、商品、サービスを提供できますし、バリアフリーのエキスパートと一緒に働くこともできます。インクルーシブでバリアフリーなサービスを開発するプロセスを手伝ってくれる人はたくさんいます。
[00:20:00] ブランドン それでは、少し旅行業界を採点してみましょう。旅行業界のどの分野が大きく前進し、どの分野がまだ改善の余地があると思われますか。
[00:20:13] アルバロ ホテルに関しては、全般的にかなり改善していると思います。リゾートとクルーズについても、かなり良くなっていると思います。ツアーとアクティビティに関してはまだ改善の余地がありますね。場所によっては良くなったところもあります。米国は世界のほかの地域に比べて良くなっていると思います。英国とオーストラリアもそうですね。まったく進展が見られないのは、やはり航空業界です。まったくです。過去 20 年間、まったく進展が見られません。
[00:20:52] ブランドン トビーさんはいかがですか。
[00:20:53] トビー そうですね、私は目が見えず、盲導犬と一緒に旅行しますが、多くの障壁は態度に関するものだと感じます。障がいに対する社会全体の考え方、感じ方、対応の仕方は、ある程度進歩していると思います。ベビーブーム世代が年齢を重ねて障がいを持ち始めていますが、この世代は非常に多くの自由に使えるお金を持っています。たしか 17 兆ドルぐらいだったと思いますが、人類史上最も裕福な世代です。それが変化を起こす原動力になっています。また、ミレニアル世代と Z 世代には、障がいを個性として社会的に受け入れる人が増えています。いくつかの面で前進が見られ、その中でも特に重要なのは、受け入れられることだと思っています。ですが、アルバロさんのお話のように、態度の面での障壁だけでなく物理的な障壁についても、まだまだ道のりは遠く、物理的に旅行が不可能、あるいは難しいということも多いと思います。
[00:21:47] ブランドン トビーさん、本日はご一緒できて大変光栄でした。今回の旅行のテーマについて非常に精通したお二人から貴重なお話を伺うことができました。私たちが業界として思ったほど前進していないことは、少しばかりショックでしたが、今日のお話から、私たちに何ができるか、少なくともある程度の道筋は見えたと思っています。お二人がそれぞれのお立場から、旅行業界でこういった取り組みをされていることを嬉しく思います。本日はお聴きの皆様に貴重なお話をしていただき、大変ありがとうございました。
[00:22:09] トビー こちらこそ、今回のようなトピックについてはいつでも喜んでお話します。介助動物を利用している障がい者の一人として、私にとって非常に重要なテーマですから。私もアルバロさんもこれまで何度も差別を経験してきました。私たちが受けてきた、こうしたさまざま経験を見聞きするのは心が痛むことと思います。それは、世界中にいるさまざまな程度の障がいを持つ 18 億人の障がい者の話というわけではなく、一人ひとりの個人的な体験の話なのです。これは複雑な問題で、解決は簡単ではありません。旅行の各工程には多くの人がかかわっていると思いますが、アルバロさんや私のような人は目に見える障がいを持って旅行をしていて、アルバロさんは物理的障壁に、盲導犬を連れている私は人の態度の面での障壁に遭遇しますし、他にも目に見えない障がいを持った多くの人がいます。障がいを持つ旅行者により良いサービスを提供できるように、障がいを持った私たちのような旅行のプロがそういった体験について知り、学ぶことが非常に重要だと思います。
[00:23:22] ブランドン 同感です。大変興味深いのが、Expedia Group の調査で、70% の消費者が、価格が高くてもよりインクルーシブな旅行オプションを選択すると回答していることです。収益面から考えれば、施設により多くの旅行者を招くことが良いのは言うまでもありません。ビジネス的に良い判断であり、もっと重要なのは、そうするのが正しいことだということです。さて次は、ホイール ザ ワールドと Expedia Group がどのように協力し合っているか、もう少し詳しく話しましょう。ホイール ザ ワールドは Expedia Group の専用 Rapid API テクノロジーを活用することで、Expedia Group の世界中のホテル在庫を提供しながら、旅行者が制限なく世界を旅することを可能にしています。ホイール ザ ワールドでは、Rapid API によりバリアフリーの程度に基づいて宿泊施設を絞り込むことができる機能を導入し、障がいのある旅行者にとって使いやすいシームレスでエンドツーエンドのサイトを実現しています。また、ホイール ザ ワールドは Expedia Group Accelerator プログラムにも参加しています。この取り組みは、ホイール ザ ワールドのようなスタートアップ企業が Expedia Group の専用テクノロジープラットフォーム上で迅速な成長とイノベーションを実現できるよう支援することで、旅行業界におけるイノベーションを推進することを目的としています。このプラットフォームを使用した感想をアルバロさんに伺ってみましょう。
[00:24:29] トビー アルバロさん、Expedia Group Accelerator プログラムに参加した感想をお聞かせください。ホイール ザ ワールドにとってどのような意味があり、旅行業界のバリアフリー全体にとってどのような意味があると思われますか。
[00:24:41] アルバロ 非常に素晴らしい、優れたプログラムだと思います。当社はスタートアップ企業として多くの Accelerator プログラムに参加してきましたが、本プログラムはメディア向けや PR 目的ではなく、本当にパートナーシップやコラボレーションを目的としたプロジェクトであり、そのことに心を躍らせています。ホイール ザ ワールドは基本理念を非常に明確に定め、大切にしています。その一つがコラボレーションです。それを基本理念にしている理由は、私たちの目的であるバリアフリーな世界の実現は、私たちの力だけでは不可能であり、コラボレーションが必要だからです。ですから私たちにとって、このアクセラレーター プログラムに参加して Expedia とパートナーシップを結べるのは素晴らしい機会であり、業界内での当社の専門性であるバリアフリーのエキスパートという立場により集中できる機会でもあります。
[00:25:46] ブランドン それは素晴らしいですね。Expedia Group 側が得るものも大きいと思います。すでに掲載しているバリアフリーに関する内容がより一層充実するのは非常に有益なことです。寝具の高さや客室の幅、シャワーの仕様、その他の特徴といった点について、パートナーシップについて考える際、どのようなアプローチを取っておられますか。
[00:26:10] アルバロ 私のアプローチは、当社でそうした情報を提供できる、というものです。そうすれば情報を検証できるし、情報を信頼できます。正しい情報を入手するプロセスに力を入れるというアプローチです。そして、当社だけではアクセスできない何十万社もの Expedia のパートナーにアクセスできます。
[00:26:36] ブランドン ありがとうございます。最近業界で起きているポジティブな変化を考えると、3 年後から 5 年後、旅行がもっとバリアフリーになるには、どのような重要な変化が起きてほしいと思われますか。
[00:26:49] アルバロ 私たちが想像しているのは、旅行サービス提供会社が行動を起こし、バリアフリーに投資するようにできないか、ということです。そこにビジネスチャンスがあれば実現するはずです。旅行サービス提供会社がバリアフリーを進めれば、もっと収益を上げ、お客様を増やし、ロイヤルティの高いお客様を増やすことができると確信しています。5 年後には、当社が集めているデータ、提供しているエクスペリエンス、今後提供するエクスペリエンスから見て、当社は、旅行サービス提供会社がより自信を持って投資できるような、収益化可能な投資モデルを旅行サービス提供会社に簡単に提示できるでしょう。
[00:27:48] ブランドントビーさんにも同じ質問をしたいと思います。もし指を鳴らすだけで何でも起こせるとしたら、旅行業界をもっとバリアフリーにするために何をしますか。
[00:27:57] トビー 意識の向上です。いつでもあらゆる場所で全員にとってすべてをバリアフリーにするのは現実的ではないと思うので、私は最初に人の態度と意欲に目を向けます。バリアフリーをいつも実現できるとは限らないとしても、人が障がいのある方を受け入れようという意欲、正しい態度を持つことには非常に意味があると思うからです。ですから、人の意識です。私たちは企業として業界内での地位を活かし、パートナーが旅行をバリアフリーでインクルーシブにする重要性を理解できるようにサポートできます。
[00:28:39] ブランドン それでは、今日の主なポイントとアクションをまとめましょう。サービスをもっとバリアフリーにするために、旅行サービス提供会社が今すぐできることを 1 つ選ぶとしたら、何でしょうか。
[00:28:47] アルバロ 意識を高め、障がいを持つお客様により良いサービスを提供できるように、自分自身で学び、チームを教育し、サービスを改善しましょう。これらはすべて、基本的にホイール ザ ワールドがパートナーと共に行っていることです。私たちはパートナーがバリアフリーの程度を理解できるようサポートし、何がうまくいき、どの点を改善できるか伝え、スタッフを訓練しています。私たちは自分たちのすることが世界を変えると確信しています。これからもホイール ザ ワールドにご注目ください。
[00:29:17] ブランドン トビーさん、先ほどの質問について少し違った角度から伺いたいと思うのですが、トビーさんは先ほど意識についてお話されました。使うべき表現と質問という点について個人的に思うのは、相手を不快にしてしまうことを恐れて、尋ねることをためらうことがあります。適切な言葉と質問を使うということに関して、どのように配慮すればよいか視聴者の皆様に説明していただけますか。
[00:29:39] トビー この質問はよく聞かれるのですが、私たち障がい者は「関わらせてほしい」と思っているので、その質問は非常に重要だと思います。まず、健全な興味を持つのは大事なことですが、それには敬意と関連性のバランスが取れている必要があると思います。たとえば、目が見えないことは私の非常に大きな特徴ですが、私の特徴はそれだけではありません。ですから、相手をよく知りましょう。それから自分の意識を高めるもう一つの方法は、地元の障がい者コミュニティと関わってみることです。世界中のあらゆるところに障がい者のインクルージョンを目的にした慈善活動や非営利団体、NGO があり、多くの学ぶ機会があります。文化の違いも多くあります。世界中で文化は違います。私は自分の経験から話していますが、私は米国で育ちましたし、米国も時間と共に変化しています。私が行った場所によっても違いがありました。ですから、私が皆様におすすめしたいのは、健全な興味を持ちつつ、それと同時に敬意と学ぶ意欲を持つ、ということです。これと少し関連した質問をアルバロさんに聞いたみたいと思うのですが、バリアフリーと障がい者のインクルージョンを始めることに二の足を踏んでいる提携会社に、アルバロさんならどのようなアドバイスをしますか。
[00:30:52] アルバロ 試してみたらどうでしょう、と提案します。御社のコミュニティに近い障がい者の方に、お試しサービスを提供してみましょう、と言いますかね。世界の人口の 3 分の 1 は障がいを持っているので、誰でも障がい者の知り合いがいます。そういった人にコンタクトを取って自社のサービスを試してもらい、うまく行くか確認して前に進むのです。ホイール ザ ワールドのように、企業としてプロフェッショナルなサポートをすることを通じて理解を深め、一歩ずつ前進していく方法を理解し続けることで、サービスをインクルーシブに改善できるでしょう。
[00:31:34] ブランドン ありがとうございました。本日は、御社のお話と旅行サービス提供会社へのアドバイスをお伺いしました。すべての人に旅を提供したいというアルバロさんの熱い思いが、視聴者の皆様に伝わったことと思います。今聞いている皆様も同じ思いでしょう。私も旅行が大好きで、このポッドキャストを旅のヒントに利用しています。そこで、憧れの旅行先について伺いたいと思います。皆さんの憧れの旅行先はどこですか。最初に私から話し、次にトビーさん、最後にアルバロさんに伺いたいと思います。よろしいでしょうか。それでは私から。シーズン 1 をお聴きの皆様はご存知かと思いますが、私はベトナムの大ファンです。ですが、ホーチミンに 1 回しか行けていません。憧れの旅行は、ベトナムの川でクルーズを楽しむことです。北部と南部の海岸沿いを巡って、芸術と文化に加えてビーチでリラックスする時間も楽しみたいと思っています。またベトナムに行くのが楽しみです。
[00:32:28] トビー それはとても楽しそうですね。ベトナムは、移動が難しい障がいを持つ人にとって非常に旅行しやすい国だと聞いています。きっと多くの旅行者にとって素晴らしい国なのではないでしょうか。私の憧れの旅行先ですが、私は船旅が好きなので、インドネシアを船で旅したいですね。インドネシアには 18,000 ぐらいの島があったかと思います。全部は無理でしょうが、たくさんの島に行ってみたいです。私はインドネシアの文化や音楽、それから食事が好きなんです。そういうわけで、インドネシアが今の私の憧れの旅行先ですね。
[00:33:02] アルバロ 私の憧れの旅行先についてですが、トビーさんと直接会ったのは 2 回目ですが、トビーさんは 2 回ともパタゴニアのトレス デル パイネについて尋ねてきたんです。ですから、私はトビーさんと一緒にパタゴニアに行くというのを挙げたいと思います。
[00:33:16] トビー それはいいですね。
[00:33:21] ブランドン トビーさん、念願が叶いますね。登山靴を用意しておかないと。
[00:33:24] トビー そうですね。アルバロさんにそう言ってもらえてとても嬉しいです。
[00:33:28] ブランドン トビーさん、本日は貴重なお時間をありがとうございました。お忙しい中、合間を縫って今回の企画のためにお時間を割いていただいたことと思います。詳しいお話をお伺いでき、大変参考になりました。旅行がもっとバリアフリーになるようにトビーさんが日々 Expedia Group に提案している内容に加え、態度に潜む差別について理解が深まり、視野が広がった思いがします。ホイール ザ ワールドと同社の事業内容についてもっと知りたい方のために、このポッドキャストの概要欄に資料のリンクを掲載しておきます。ポッドキャスト「旅行ビジネスをサポート」のシーズン 2 をお聴きいただきありがとうございました。皆様のご意見をお聞かせください。メールは PoweringTravel@ExpediaGroup.com 宛てにお送りください。ExpediaGroup.com にアクセスしてご登録いただくと、新着エピソードの情報を入手できます。もっと多くの方にご視聴いただけるようにエピソードの評価やレビューもお願いします。今回のシーズンも盛りだくさんの内容でお送りします。シーズン 1 よりもっと充実したものになることをお約束します。ご視聴ありがとうございました。
登場いただいた専門家の皆様
アルバロ シルバースタイン氏
ホイール ザ ワールドは、バリアフリーの旅行を予約できる障がいのある方とシニア向けのオンライン サイトです。チリ出身の起業家で講演家、熱心な障がい者支援者でもあるシルバースタイン氏は、何百万人もの人が世界を自由に旅行できるように、2018 年に同社を設立しました。
トビー ウィリス
レーバー先天性黒内障という遺伝性の病気により目が見えませんが、公私にわたる多くの障害を乗り越えて目標を達成してきました。これまでに 2 社を立ち上げ、2 つの修士号を取得し、インクルーシブデザインの考え方の重要性について世界中で講演してきた経験を持ちます。
ブランドン エアハルト
Expedia Group の B2B 宿泊施設に関するマーケティング責任者であり、パートナープログラムの拡張に関して重要な役割を果たしてきました。戦略的事業をリードし、収益分析データの利用を広げることでパートナー様の成功を促進しています。妻と旅行好きの子供と一緒にイリノイ州シカゴで暮らしています。
Where to listen
What would you like to hear next?
今後のエピソードのトピックやゲストについて、ご希望がありますか。ご提案やご意見をお寄せください。お待ちしています。
弊社サイトの改善のため、ご意見をお聞かせください。